「はぁ~……」
いつもだったら一週間で一番仕事に気合いの入る金曜日。私はまだ先週のショックを引きずっていた。
「日向先輩、どうしたんですか。今週ずっと様子が変でしたよ。夏バテですか?」
デスクでため息をついていると、同じ企画部で仲の良い後輩、久保田がピンクブラウンに染めたボブヘアを揺らして声をかけてくる。
入社二年目の久保田はまだ心もお肌もぴちぴちだ。薄付きのファンデーションはまったく化粧崩れしていないし、冷房の効いたオフィスでもノースリーブ一枚で平気な顔をしている。
「夏バテというか……、心がバテているというか」
今だけそのぴちぴちの若さをよこせ、とうらめしく思いながらつぶやくと、久保田は目を見開いて大げさに驚いた。
「ええっ! 仕事の鬼の日向先輩がですか!?」
「鬼って、ひどい」
「だって、私が入社してきてから、先輩が弱ったところなんて一度も見たことありませんもん。男性社員の目が死ぬようなハードな時期でも、常にパワフルでやる気に満ちあふれているのが先輩じゃないですか!」
「うん……、そうなんだけどね……。そうだったんだけどね……」
「本当に、なにがあったんですか?」
久保田は眉根を寄せて、顔を近付けてくる。これは本気で心配してくれているみたいだ。でもなんとなく、会社の人には自分の趣味が居酒屋でのひとり飲みだってこと、言いたくなかった。
いつもだったら一週間で一番仕事に気合いの入る金曜日。私はまだ先週のショックを引きずっていた。
「日向先輩、どうしたんですか。今週ずっと様子が変でしたよ。夏バテですか?」
デスクでため息をついていると、同じ企画部で仲の良い後輩、久保田がピンクブラウンに染めたボブヘアを揺らして声をかけてくる。
入社二年目の久保田はまだ心もお肌もぴちぴちだ。薄付きのファンデーションはまったく化粧崩れしていないし、冷房の効いたオフィスでもノースリーブ一枚で平気な顔をしている。
「夏バテというか……、心がバテているというか」
今だけそのぴちぴちの若さをよこせ、とうらめしく思いながらつぶやくと、久保田は目を見開いて大げさに驚いた。
「ええっ! 仕事の鬼の日向先輩がですか!?」
「鬼って、ひどい」
「だって、私が入社してきてから、先輩が弱ったところなんて一度も見たことありませんもん。男性社員の目が死ぬようなハードな時期でも、常にパワフルでやる気に満ちあふれているのが先輩じゃないですか!」
「うん……、そうなんだけどね……。そうだったんだけどね……」
「本当に、なにがあったんですか?」
久保田は眉根を寄せて、顔を近付けてくる。これは本気で心配してくれているみたいだ。でもなんとなく、会社の人には自分の趣味が居酒屋でのひとり飲みだってこと、言いたくなかった。