「私ちょっと、お手洗いに」

 こんなモヤモヤした気持ちのまま会話を続けられないから、いったんひとりになってクールダウンする。

「はー、しんどい」

 すぐに勘違いを撤回しなかった自分が悪いのだが、こんな展開になるとは思っていなかった。

 思い返せば、大学のコンパでも、職場の忘年会でも、酔い潰れるほどは飲んでいなかったが、いつも他の女性陣よりピッチが早めだった。それを気にしたことはなかったけれど――。

「もしかして、今までも裏で言われてたのかな……」

 そんなネガティブな感情まで湧いてきて、あわてて首を振る。

 たまたまだ。たまたま、自分と合わない人に出会っただけ。道で小石につまづくのと同じようなものだ。いちいち気にしていたらきりがない。

 お手洗いから戻ると、ちょうど新郎新婦が到着したところだった。だらだらしていた会場はわっと湧き、お祝いムードに。
 私もとびっきりの笑顔を作りながら、パーティードレスに着替えた千鶴に駆け寄った。