「弱くなきゃダメってことはないけど。酒豪はちょっと、嫌かな。俺、結婚相手には専業主婦になってほしいタイプだから」

 それは控えめな主張だったけれど、困り笑いの表情の中にこの人の真意がすべて込められている気がして――私は笑顔を作れなくなった。

 きっとこの人たちは、酒豪の女性が目の前にいても、紳士的には扱ってくれる。でもあとから、『あれはないよな』『女性として見られない』と笑い話にするんだろう。高木さんは直接会話には混ざらないかもしれないけれど、否定もせずに相槌を打っていて……。

 さっきまで『いい人』と思っていた目の前の男性たちが、違う人間みたいに見えてくる。

「……充希、気にしないほうがいいよ」

 私の様子に気づいた祐子が、心配そうに私の肩に手を乗せる。

「大丈夫、ありがと」

 京香も、男性陣をちらっと見て眉を寄せた。

「そうだよ。男なんてみんな勝手にこっちをジャッジするんだから、充希がショックを受ける必要なんてない」

 そう言われてやっと、私は自分がショックを受けていることに気づく。
 そうか、この感情は、自分が否定されたことに対する悲しみなんだ。そして、お酒を飲む行為にまで女性らしさを求める人たちへの、行き場のない怒り。