「……なによ」
「いやいや、意外と話が弾んでたなーと思って」
「べつに、当たり障りないこと話してただけだよ」
「ええー、せっかくイケメンだったからふたりにしたのに、好みじゃないの?」

 端っこに連れていかれて、こそこそと耳打ちされる。

「そういうわけじゃないんだけど……」

 イケメンだし、礼儀正しいし、話していてもおかしな価値観のズレは感じなかった。今までだったら間違いなく、好感は持っていた相手だろうと思う。

「ただなんとなく、そういう気分にはならないというか」

 不意に男性らしさを感じてドキッとしたりとか、いつの間にか素になっていたりとか、そういうのはなかった。
 ……誰と比べているのか、という話だが。

「まあ、会ったばかりだから仕方ないか。でもさ、あんないい物件、なかなかないと思うよ。けっこう大きめの住宅メーカーにお勤めなんでしょ? まあ、バリキャリの充希からしたら物足りないのかもしれないけど」
「そんなことないよ。私も、高木さんに彼女がいないのは意外だと思ったし」
「なんだ、もうそんな話までしてるのか。私が心配する必要なかったみたいね」