「そ、そう見えるんだ……」

 私は引きつった笑みを浮かべる。あちらは私に間違ったイメージを抱いているみたいだし、『お酒大好きです!』とは打ち明けられなくなってしまった。

 まあいいか。どうせ数時間一緒に飲むだけの人だし。今後会うこともあるまい。

 それからは、自分の職業など無難な話題が続く。高木さんは予想通り、住宅メーカーの営業だった。趣味を聞かれたときは困ったが、『後輩とおいしいお店にランチに行くこと』と答えて難なきを得た。趣味というよりは勤務時間内のことだが、間違ったことは言っていない。久保田、いつもランチに誘ってくれてありがとう。

「充希ちゃんは誰か付き合っている人、いるの?」

 私の緊張がとけてきたころ、高木さんは『ランチでお気に入りの店、あるの?』と訊くようにフランクに尋ねてきた。

「えっ、いないよ」
「じゃあ、好きな人は?」

 なぜか塩見くんの顔が思い浮かぶものだから、動揺する。ないない。私はそんな目で塩見くんを見ているわけじゃない。