「ちょ、ちょっと!」

 いきなり知らない男性とふたりきりだなんて、困る。こっちは五年も彼氏がいないせいで、男性への免疫なんてとっくになくなっているんだから。
 祐子の腕をつかみ、助けを求める目で見たのだが。

「うまくやりなさいよ、チャンスなんだから」

 とひそひそ声で耳打ちされ、さっさとむこうのテーブルに行ってしまった。

「いいお友達ですね」

 あぜん、とその背中を見送っていると、隣に来ていた男性が笑みを浮かべた。

「いや、はあ……。すみません、騒がしくて」
「仲がよさそうで、いいじゃないですか」

 男性は持っていたカクテルをテーブルに置いた。対面の位置に移ってくれたことにほっとする。隣よりは、間にテーブルがあるぶんだけマシだ。

「そういえば、お名前。充希さん、っていうんですね」
「あ、はい。日向充希といいます」
「俺は、高木大地です。新郎とは高校のときの友人で。部活が一緒だったんですよ」
「あ、私たちもです。私たちの場合は、三年時のクラスが一緒だったんですけど」

 聞けば、新郎と高木さんはラグビー部に所属していたらしい。ラグビーなんて、運動部の中でもかなりハードなイメージだ。千鶴は美術部に所属していた文科系の子なので、体育会系の人と結婚したことに驚きを感じる。