「すみません、急に声をかけて。あのとき見ていて、すごくかっこいいなって……。よかったらお話してみたいなと思ったんです」
「えっ。私とですか?」

 意外な申し出に驚いて、成り行きを見守っている祐子と京香の顔をうかがう。ふたりとも私と同じように驚い……てはいなかった。『あらまあ』という表情で口元を手でおおってはいるが、目はにやにやしている。
 これは絶対、面白がっているな。

「はい。むこうのテーブルで、俺たちのグループが集まっているんです。よかったら新郎新婦到着まで、一緒に飲みませんか? さっき友達が連絡したら、まだ時間がかかるらしいので」
「え? えっと……」

 なんと答えたらいいか、私がまごまごしていると。

「そういうことなら、ぜひ~!」
「うんうん。私たちも千鶴の旦那さんの話、聞きたいもんね!」

 後ろから私の肩をガッと掴みながら、ふたりが前のめりで男性の提案にうなずいた。

「あ、もし充希と話したいんだったら、ここどうぞ! 私たち、お友達の人たちと先に合流してますんで~!」

 しかも、私をひとり残していそいそとテーブルを離れようとしている。