「いろいろあるよね、この歳になるとさ。うちらももうアラサーだし。高校生のころから考えると信じられないけど」
「ね。中身は大して変わってないのにねー……」

 せっかく持てた勇気だが、タイミングを逃してしまった。いったん置きにいった話題を蒸し返すのは、気まずい。

 二人は青春時代を思い出しているのか、遠い目でカクテルを傾けていた。みんな揃って言葉少なになり、なんだか私たちのテーブルだけアンニュイな雰囲気が漂っていたとき。

「あの~……、ブーケをキャッチした人ですよね?」

 声がぎりぎり届くくらいの遠さから、ひとりの男性が私たちに話しかけてきた。

「はい、そうですけど……?」

 返事をしながら、この人、新郎側の受付をやっていた人だ、と気づく。対応が丁寧で、常に笑顔だったから覚えている。ふだん接客か営業の仕事をしている人なのかな?と思ったんだ。

 こうして見ると、背も高いし、礼服用のスーツも着こなしているし、見栄えのする人だ。塩見くんと比べるとスポーツマンぽい男らしさはあるが、押しが強そうな感じではない。