「充希、今日のメイクかわいいね。まつ毛もこれ、よく見ると赤入ってる?」

 グループの中でも特にオシャレな銀行員の祐子が、目ざとくメイクに気づいてくれる。

「ありがと。秋の新色でまとめてみたんだ。マスカラの色も、ドレスにあわせてボルドーにして。一見茶色だけど、光が当たるとボルドーに見えて、さりげなくていいでしょ?」

 ドレスは今日のためにあわてて買いに行った代物だ。二十代前半に買ったドレスが似合わなくなっていたのだから仕方ない。なんとなくショールは羽織りたくなかったので、袖がレースになっているタイプのボルドーのドレスを選んだ。暗めのボルドーだから結婚式でも派手すぎないし、タイトなシルエットで甘すぎず、私好みだ。

 友達のドレスは、サーモンピンクや緑、紺など色とりどり。その子のキャラに合った色を選ぶと誰ともかぶらない、という奇跡が起きている。

「はー、さすが化粧品会社の出世株。私が美容院でやってもらったメイクより、プロっぽい。髪形も自分でやったの?」
「まさか。美容院でやってもらったよ」

 ドレスの雰囲気に合わせて、アップではなく編み下ろしにしてもらった。編み込みが駆使された三つ編みアレンジは、大人かわいくて普段でもマネしたい。