眉根を寄せてじーっと塩見くんの顔を見つめていると、ぱっと顏を背けられた。

「先輩、見すぎです」
「あ、ごめん」

 横を向いた塩見くんの耳が赤く見えるのは、気のせいだろうか。

「ねえ、塩見くん」

 呼びかけると、怒ったような、力の入った顏のまま塩見くんは振り向く。

「どうしてここまでしてくれるの? 一緒に飲むのが楽しいっていうのはわかるけど、今日のごはんは違うじゃない。ふたりで飲むためっていうよりも、私のために作ってくれたごはんよね」

 彼が一瞬ハッとした表情になったのが、私にはわかった。そのあとすぐに穏やかな笑みを浮かべた塩見くんに戻ったが。

「それは……、自分の夕飯を作る手間を考えたら、ふたりぶん作ったほうが効率的だったからですよ」

 その『手間』が、本人が語るよりもずっと労力のいるものだったことを私は知っている。

「塩見くん、ごめん。実は見ちゃったの、机の下にあるレシピ本とコピー……」
「えっ」

 唖然とする塩見くんに謝罪を繰り返す。

「勝手に見てごめんなさい。でも、なんでここまでしてくれるのか、気になっちゃって」