「え……っ」

 そのほかの紙も、『夏バテに効く食材』だとか『食欲のないときでも食べられるレシピ』だとか、そういった情報をプリントアウトしたものだった。

 まさか、私がメールをしてここに来るまでの間で、こんなに調べてくれたの? さっき言葉を濁していたのは、急いで調べたことを知られたくなかったから?

 私のためにレシピ本やネットを必死で調べてくれている塩見くんを思い浮かべたら、胸の奥から、あたたかな気持ちがあふれてきた。うれしくて、不意にもらったプレゼントみたいにドキドキして、顔が熱くなる。

「あれ、待っててくれたんですか」

 お茶碗によそったご飯とお味噌汁を運んできた塩見くんが、私に声をかけながらエプロンを外す。

「うん。冷奴も少し、残ってたし」

 感激を表に出すと目が潤みそうだったから、平静を装って言葉を返す。

「そうでしたか。じゃあ、メニューも揃ったし食べましょうか」

 腰を下ろした塩見くんと一緒に、手を合わせる。

「いただきます」

 ふたりの声が揃う。こうして、ご飯とお味噌汁、おかずを目の前にして食事をしていると、『宅飲み』というより『日常のごはん』みたいで――。日常なのに、塩見くんと普通の食事をしているのが非日常みたいで、戸惑う。

 だってこんなの、家族か恋人同士みたいじゃない。