口をつけた甘酒は、甘すぎず飲みやすかった。風味が濃いし、米の粒も残っている。

「おいしい。缶の甘酒を飲んだことがあるけれど、もっと水っぽかったわ。もしかしてこの甘酒って、塩見くんの手作りだったりする?」
「いえ、手作りですけど、母のなんです。濃縮した甘酒を送ってくれたので、薄めて甘みを足して、鍋で温めました」

 小皿にちまちましたものを盛り付けている塩見くんに尋ねると、そう返ってきた。

 例の、お父さんに毎日おつまみを作っていたお母さんだ。きっと塩見くんみたいに、細やかな性格なのだろう。そうでなかったら、手間のかかる甘酒なんて手作りしないと思う。

「手作りだからこんなにホッとする味なのね」

 飲んでいると、胃が温まって落ち着いてくる気がする。疲れてカチコチに固まっていた身体も、ほぐれていく。

「食欲、出てきましたか? 今日の付き出しはこれです」

 グラスの甘酒が半分になったころ、待ちに待ったおつまみが私の前に出された。白いお皿に盛られた、見慣れた白い物体。

「これは……冷奴?」

 でも、ただの冷奴ではない。豆腐の小皿のほかに、仕切りのある長細いお皿がもうひとつ。焼き肉屋のタレ皿のようなそれには、ひとつのスペースごとに違うものが盛り付けられている。