出迎えてくれた塩見くんは、Tシャツにスエットパンツと、初めて見る部屋着姿だった。いつものシャツ姿よりも身体のラインが出ていて、ドキッとする。広い肩幅や、意外と筋肉質な腕が、細く見えてもやっぱり男性なんだなと意識させる。

「し、塩見くん。メモ見たんだけど……」

 もうお風呂に入ったあとなのだろうか、髪が少し湿っていて、せっけんの匂いがした。

「お帰りなさい。息切れしてますけど、もしかして急いで来てくれたんですか?」

 塩見くんは私の姿を見て、目をみはった。

「だ、だって。あんなメモを見たら焦るじゃない」
「ゆっくり準備してください、って書いておけばよかったですね」

 そう言っていたずらっぽく微笑むものだから、急に自分の行動が恥ずかしくなってきた。なにもこんなに急がなくても、メールを送ればよかったんじゃ。

「でも、うれしいです。そんなに急ぐほど楽しみにしてくれていたんですね。キャンセルのメールをもらったときは、残念でしたから」

 つっかけてきたサンダルを脱いでスリッパに履き替えながら、言葉を交わす。

「そりゃあ、週に一度の楽しみですもの。塩見くんのおつまみがあるから仕事をがんばれているようなものだし」

 そこまで答えて、先ほどのセリフに引っかかりを覚える。短い廊下を先に進む塩見くんの背中に声をかけた。