「はあ~……、疲れた……」

 仕事を終え、アパートに着いたときには二十二時を回っていた。外階段を上る足が重い。パンプスに突っ込んだ足がむくんで痛くて、今すぐストッキングと一緒に脱ぎたい。

 なんとかドアの前までたどり着くと、パステルブルーのメモが目に入った。

「……なにこれ?」

 メモが、テープでドアに貼りつけてある。剥がして確認すると、ボールペンで書かれた端正な文字が並んでいた。

『お帰りなさい。残業お疲れさまです。胃にやさしいものを作ってあるので、もし元気があれば来てください。塩見』

 えっ、とメモを二度見する。

 今日はナシで、って送ったのに。了解です、って返事が来たのに。もしかしてあのときそっけない返事だったのって、最初からこのことを考えていたから――?

 バタバタと部屋に上がって、荷物を置く。転びそうになりながらブラウスとフレアスカートを脱いで、適当につかんだTシャツと短パンに着替えた。そのまま外に出て、軽く息切れしながら塩見くんの部屋のチャイムを押す。

「――はい」

 遠くから返事が聞こえる。足音が近づいてきて、「日向だけど」と声をかける前にドアが開いた。