そして、次の日。

「胃が気持ち悪い……」

 朝起きると体調は最悪だった。最初は『二日酔いかな。お昼くらいには治るだろう』とタカをくくっていたのだが、夕方になっても体調は良くならなかった。

 もしかしたら、もともと夏バテしていたところに飲み食いして、胃がダメージを受けてしまったのかも。

 胃腸は丈夫なほうなんだけど、最近仕事が忙しかったし、無理できない年齢になってきたということなんだろう。やっぱり二十代前半のときのようにはいかないか、と実感すると少し切ない。

「こんなんじゃ、明日の塩見くんのおつまみ、食べられないかも……」

 夜、ゼリー飲料だけ摂ってベッドに寝転がり、ため息をつく。こんなときでも心配するのは自分の体調ではなくて、食べもののことだなんてどうかと思うけれど、欲望には逆らえない。

 明日がキャンセルになったら、次に塩見くんのおつまみを食べられるのは一週間後だ。毎食胃腸に優しい粗食でがまんして、来週までごほうびがおあずけなんて、そんなの耐えられない。

 しかし、もしかしたら明日には快復しているかも、という望みが捨てきれない。

 塩見くんには、明日の夕方までに連絡すればいいし、ギリギリまで粘ってみよう。水分をしっかり摂って、胃薬を飲むくらいしかできることはないけれど。

「朝起きたら、すっかり元気になっていますように……」

 そう祈りながらいつもより早い時間に目を閉じる。