「えーっと、塩見くんのことはあんまり知らないし、興味ないかな。年下だし」

 笑顔が引きつりそうだったけど、なんとか動揺をおさえて返事する。すると、後輩は「ですよねー」と言いながら苦笑した。

「先輩のほうが四つも年上だし、あり得ないですよね」

 心臓に、チクリと刺が刺さった。

「ちょっと、その言い方は失礼じゃない? あり得ないとか……。彼氏が年下の場合だって、あるでしょ」

 久保田が後輩をたしなめたが、当の本人はきょとんとしている。

「え。だって、日向先輩はきっと、年上で仕事がバリバリできる人しか眼中にないんだろうなって……。なにか悪いこと言いました?」

 本当にこの子には、悪気がないんだろう。でも、悪気がないというのが一番ショックだ。四つ年上の私と塩見くんの組み合わせは、一般的に見て『あり得ない』ことなんだ……。

 なんだか胸が痛むけれど、私と塩見くんはただの飲み友達なんだから、年齢なんて関係ないはず。

「先輩。気にしないほうがいいですよ。二十八歳はまだ若いです。あの子がまだ子どもなだけですから」
「大丈夫、気にしてないって」

 大学を卒業したばかりの子からしたら、入社六年目の先輩なんてお局よね。こんなことで傷ついていたら、この先どんどん歳を取っていくのに、仕事なんてやっていけない。

 でも、どうしてだろう。胸がむかむかする。