不審げに見つめる久保田をスルーしていると、いいタイミングで話題が変わった。

「そういえば、みなさんは最近どうですか? 恋愛方面」
「私は全然ダメです。大学を卒業したら、出会いもなくなるんですね……。OBの先輩たちに、大学生のうちに恋人を作っておけってしつこく言われた意味がやっとわかりました」

 そう、実感のこもった愚痴をこぼすのは今年入社した後輩だ。

「まだ一年目は出会いが多いほうだよ。本当に悲惨なのは二年目からだって」

 久保田がそう脅すと、後輩は「ひええ」と肩を震わせた。

「えっでも、うちの会社にもかっこいい人けっこういません?」

 フォローにまわってくれたのは、一個下の後輩だ。

「えー、います? そんな人」
「営業部の塩見くんとか、人気ですよね。友達が『かっこいー』って騒いでました」

 唐突に塩見くんの名前が出て、心臓がばくんと跳ねた。

「あ、私も知ってます。確かにいいですよね! 爽やかで」

 私と久保田以外の三人が、きゃあきゃあと騒いでいる。どうやら塩見くんは、私が思っているよりもずっと有名人だったらしい。