遮るものがなにもないビルの屋上に、夏の夜の生ぬるい風が吹きつける。ばさばさと顔にかかる長い髪がうっとうしいけれど、ビアガーデンの場の雰囲気は好きだ。

「じゃあ、かんぱーい!」

 全員に生ビールが行き渡ったところで、仕切り上手の久保田が音頭をとってくれる。今夜集まったのは、私たちを入れて五人。まあまあの出席率だ。

 慣れ親しんだいつものメンバーだけあって、注文する人、話を振る人、盛り上げる人の役割ができているのが楽だ。その中だと私は……、マイペースに飲む役だ。一番年上なので、あまりでしゃばらないようにしているとも言えるが、お酒が入るとつい、まわりを気にせず飲むことと食べることに集中してしまう。

「あ、おつまみも来た。お皿も少ないし、みんな好き勝手に取る感じでいいですよね」
「オッケー」

 テーブルに並べられたのは、フライドポテト、唐揚げ、アヒージョ、ピザなどビアガーデンらしい定番メニュー。

「マルゲリータおいしそー。ほかのピザも注文すればよかった」
「アヒージョ、マッシュルームが大きくていい感じ!」

 みんながオシャレフード目を奪われる中、私はまず、枝豆に手を伸ばした。