「しょうがないわよ。夫や子どもがいたら早く帰らなきゃって思う気持ちはわかるし」

 さすが女性中心の化粧品会社というべきか、産休・育休の制度がしっかりしているので、社内には子持ちの女性社員も多い。

「私は、結婚しても飲みには行きたいですけどね」
「そこは同感」

 唇をとがらせてそう言う久保田に、私もうなずく。すると、久保田がハッとした顔で口元を押さえた。

「もしかして私たちって、こんなこと言ってるから彼氏ができないんですかね……」
「う、それも否定できない」

 恋よりも仕事や自分の楽しみを優先しているのだから、恋愛が遠ざかっているのは当然とも言える。

「ほしいな~って思いつつも、今が楽しいからいっか、って完結しちゃう私も悪いんですけどね。先輩はどのくらいいないんでしたっけ、彼氏」
「大学時代の恋人と、就職してしばらくして別れてからだから……、五年くらいかな」
「ご、五年! それは、思っていたより長かったです……」

 久保田は唖然としていた。自分でも数えていて『こんなに長かったっけ』って驚いたくらいだから無理もない。でもこれで驚くということは久保田はそこまで独りが長くないということなので、エセ干物女確定だ。