「でも、それじゃ塩見くんばっかり作ることになるでしょう。負担にならないの?」
「そんなの、自分の料理を誰かに食べてもらえることでチャラになりますよ。それに僕も、先輩と飲むの楽しかったんで」

 そりゃあ、私だって楽しかった。先週嫌な目にあったことなんてすっかり忘れて、おいしいおつまみに夢中になっていた。塩見くんのこの部屋も料理も、お気に入りだった居酒屋と同じくらい、いやそれ以上に落ち着くもので……。

「嫌、ですか? そうですよね、毎週一緒に飲むなんて――」
「い、嫌じゃ、ない」
「え?」

 もじもじと指を組みながら告げると、伏せていた塩見くんの目線がぱっと上がった。

「嫌なんかじゃ、ないわ。塩見くんのおつまみ、本当においしかったもの。毎日だって食べたいくらい。それが毎週食べられるなんて、願ったり叶ったりよ。ただ、私ばっかり得する感じなのが……」

 場所も料理も提供してもらって、それだと塩見くんの負担が大きすぎて申し訳なくなる。