状況が変わったのは、私が三杯目のお酒を注文したあたりだろうか。

「大将、次は夏みかんサワーで。みょうがの天ぷらと、ナスの揚げ浸しも」
「おっ、夏づくしのチョイスだねえ」
「そりゃあもう、おいしい夏野菜とお酒のために梅雨を耐えたようなものですし」

 大将の目の前の席を陣取って、親しげに言葉を交わす私を、サラリーマンふたり組はねっとりした視線で見ていた。そのときから、嫌な予感はしていたんだ。

「若い女がああいうのって、どうなんでしょうね」

 聞こえてきた会話……いや、わざと聞かせようとしている会話に耳がぴくりと動く。

「お前も思ったか? いやあ、ないだろ。我が物顔でカウンター席に居座ってよお、色気もなくガバガバお酒を飲んで。自分のカミさんがあんなだったら、幻滅するね」
「カミさんじゃなくても嫌ですよ。なんにせよ、見てて気持ちのいいものではありませんなあ」

 合間にガハハと笑いを入れて、ちらちらとこちらを見ながら交わされる会話は、明らかに私をターゲットとしたものだった。