「ここでごま油を足すと、パリッと焼けるんですよ」
「そうなのね。私、冷凍餃子をフライパンで焼いて、全部くっついちゃったことがあるんだけど……。油が足りなかったのかしら」
「その可能性はありますね。あとは、フランパンが劣化しているとくっつきやすいですよ。テフロン加工もだんだん剥げていくので」
「フライパンを使うことはほとんどないから、それはないわ」

 私が自信満々に言い切ると、塩見くんは顔を背けて噴き出しそうになったのを隠した。

「す、すみません。それならきっと油か温度ですね」
「ちょっと、なんで笑うのよ」
「ふだんの先輩の口からは出てきそうにないセリフだったので……。なんだかかわいくて」
「か、かわ……!?」

 動揺して、声が裏返ってしまった。塩見くんは赤くなった私の顔に気づきもせず、すでに餃子に集中している。この子、おとなしそうな顔して天然タラシなのだろうか……?

「あ、焼き具合、そろそろいい感じです。先輩、どうぞ」

 塩見くんが私の取り皿にごそっと餃子を載せてくれる。自分のお皿にも残りを載せ、「第二弾も焼いちゃいますね」と菜箸をてきぱき動かしている。