「僕のうち、父親がお酒好きな人で。母が毎晩父のために作るおつまみを、少しもらうのが子どものころ大好きだったんです。大学生になって、自分がお酒に弱いってわかってからは、お酒が飲めなくてもおいしいおつまみを研究するようになって……。だから、おつまみを作るのが得意だから飲みませんかって誘ったの、嘘じゃないんですよ」
「そうだったのね。確かに餃子はご飯にも合うものね」

 お酒が飲める人でも飲めない人でもお腹いっぱいになれる『おつまみごはん』。塩見くんの作る料理は、そんな優しさにあふれるものだと感じた。

「自分はジュースでも、飲みに参加するのは好きなので、先輩は気にせず飲んじゃってくださいね。僕も遠慮なく食べますんで」
「わかった。そういうことなら、遠慮なくいただくわね」

 ホットプレートに油をひいて、餃子を並べていく。そのあと、水を加えて蓋をし、蒸し焼きに。

「これでしばらく待ちましょう」

 蓋を外した瞬間、蒸気といっしょに餃子の食欲をそそる香りが襲ってくる。