「ゆっくりやりますんで、見ててくださいね」

 目の前でお手本実演が行われているのに、私は塩見くんの意外と大きな手のひらや、骨ばった手首にばかり目がいっていた。
 塩見くんが男を感じさせない人だから意識していなかったけれど、自分が今男性の部屋にいるんだと急に実感して、顔が熱くなってきた。

「……こんな感じです。わかりました?」
「う、うん。なんとか」

 実はあんまり頭に入っていなかったけど、正直に言えるはずもないのでうなずくしかない。

 そのあと包んだ餃子は少しは改善したものの、塩見くんの出来には到底及ばなかった。

「うん、初めてでここまでできるなら上出来ですよ」

 塩見くんはそうフォローしてくれるけれど、自分の不器用さが如実に出ている気がする。
 ただ、不思議なもので、自分で包んだ餃子は不恰好でもなんとなく愛着がわく。もくもくと包む作業はなにも考えず没頭できて、意外と楽しい……かも。