美形一家に見惚れていると、コンコンコン、という小気味いい包丁の音が聞こえてきた。

「塩見くん、この写真ってご家族?」

 キッチンスペースに向けて声を張りあげる。塩見くんは穏やかな微笑みを浮かべながらカウンターで調理をしていた。

「ああ、そうです。両親と姉と、四人家族で。それは僕の大学卒業のときに記念に撮ったものですね」

 数年前だから、塩見くんの顔はあまり変わらないのか。そして凝った作りのエントランスは、プチ豪邸な全体像を想像させる。塩見くんはいかにも育ちがよさそうだから、納得だけど。
 料理中の塩見くんを観察していると、後ろを向いて、コンロで何かを炒め始めた。

 じゅうう~という油の音と、ここまで漂ってくる食欲をくすぐる香り。
 ――これは、にんにく? それと、スパイシーななにかも混じっている。

「あ、すみません先輩。確認するのを忘れていました。にんにくって、使っても大丈夫ですか? 明日って何か用事があったりしますか?」

 塩見くんが、フライパンを持ったまま背中をひねって振り返る。