「先輩は酔っ払いを背負い投げしちゃうし、男の部屋に部屋着で来ちゃうくらい警戒心がないし、仕事をがんばりすぎて体調を崩すくらい不器用なところもあって放っておけないし、男の影はないと思っていたのにやきもちを焼かせるようなこともさらっと言うし、仕事では自信満々なのに自分のことに関しては自信がないし」
「ちょ、ちょっと待って。私、今、好きなところを挙げられているんだよね? ダメなところじゃなくて」
「そうですよ? 全部、好きなところです」

 カアッと顔が熱くなって、やっとわかった。私はずっと、塩見くんに手のひらで転がされていたことに。今日だけじゃなくて、おそらく、最初に出会ったときから。

 でもどうして突然、塩見くんはこんなことを言い出したんだろう。

 疑問を感じ始めたときには、塩見くんは真剣だった表情をゆるめて私を見ていた。

「もう金曜日だけじゃ我慢できないんです」
「え……。な、なにが?」

 塩見くんの瞳に映った間接照明の光が、かすかに揺れた。どうしてそんなに愛しそうな目で私を見つめるのかわからず、困惑したとき……。