「……僕、今日、先輩に伝えたかったことがあるんです」

 塩見くんが改まって、姿勢を正す。一段暗くなった照明のせいで、塩見くんの顔の陰影が濃く見える。

「えっ。わ、私もあるの。訊きたいことと、伝えたいこと……」
「そうなんですか? どっちから先に言います?」
「う、うーん。塩見くん、お先にどうぞ……」

 もしこれが、『彼女ができたから金曜日の宅飲みはこれが最後で』だったら、私の訊きたいことはなくなるわけで。

「僕、好きなんです」

 静かな口調で話し始める塩見くん。私は緊張のせいで、言葉の意味がすぐには入ってこない。

「え……っ?」

 好きって、なにが? も、もしかして……。

「先輩がおいしそうに食べる顔が」
「あ、そ、そうなの」

 一瞬でも違う可能性を期待した自分が、恥ずかしくなった。

「ほかにも、好きなところはたくさんありますよ。たとえば、そうですね……」

 塩見くんはわざとらしく考えるそぶりを見せたあと、途中でつっかえそうなセリフを滔々と語り始める。