「おいしかった……。今まで食べたクリスマスディナーの中でいちばんおいしかったかも」

 レストランのクリスマスディナーに行ったこともあるけれど、そのときよりもおいしく感じる。ビルから見る夜景も、黒服のボーイもいないけれど、手作り感のあるほっこりしたクリスマスのごはんが落ち着く。

 気取ったディナーより、いつもの私たちらしい感じが、今の私には最高のごちそうなのかも。

「そこまで褒めてもらえるなんて、うれしいです。じゃあ最後に、ケーキを食べましょうか」

 塩見くんの淹れてくれた紅茶と一緒に、お手製のブッシュ・ド・ノエルを味わう。甘さ控えめに作ってくれていて、風味のいいチョコレートクリームがすうっと舌の上で溶けていく。スポンジもふわふわで、このクオリティのものを一回練習しただけで作れるなんて驚きだ。もちろん、塩見くんの料理技術があるからこそだろうけど。

 ケーキが減っていくのと同時に、キャンドルの灯も消えかかっている。

 この灯が消えたら、塩見くんに後輩の女の子との関係を尋ねよう。