「うーん、どっちもおいしくて甲乙つけがたいわ。これはなんの種類のお肉だったの?」
「片方が若鶏で、片方が熟成肉なんです」
「もしかして、歯ごたえのあったほうが若鶏で、柔らかいほうが熟成肉?」

 熟成肉はうまみが強くなると聞いたことがある。

「正解です。そもそも、スーパーに並んでいる鶏肉はほとんど若鶏なんですけど。それだと勝負にならないので、同じ地鶏で揃えてみました」

 同じ地鶏だけど、食べられる時間までが違うお肉。

「どっちにもよさがあって、どっちもおいしかったわ」
「そうですよね。僕も両方おいしいと思います。生きてきた年月なんて、それだけのことですよね」
「……え?」

 塩見くんのセリフが、鶏肉のことだけを指しているのではないように聞こえて、ドキッとする。

「歳を重ねたら、そのぶん別のうまみが出るってことです」
「ああうん、そうよね」

 気のせい、だったのかな。やっぱり、鶏肉の話だったのかも。

 そのあとは、私はカクテルにチェンジして、残りの料理を味わった。