「塩見くん、ケーキまで作れたの!?」

 驚いて尋ねると、塩見くんは「いえ」と苦笑しながら首を横に振った。

「実家にいたときは母や姉がケーキを作る手伝いをしていたんですが、自分ひとりで作るのは初めてで。実は休日に練習したときは失敗しているんです。スポンジがふくらまなくて……。今日は成功してよかった」
「練習まで、してくれたの?」
「さすがにケーキを一回でおいしく作れる自信がなかったので。ワインとチョコレートは合うので、ブッシュ・ド・ノエルにしてみたんです」

 塩見くんの心のこもったおもてなしの数々に、緊張していた心がほどけていく。

 メイクをがんばったり、オシャレする程度じゃとても足りない。私がどんなサプライズを用意したって、きっと塩見くんには、敵わない。

 今すぐ『好き』と打ち明けてしまいそうなくらい、心臓がドキドキと脈打ち始める。

 鎮まれ、私の心臓。今からこんなにときめいていたんじゃ、胸がいっぱいになってせっかくのお料理が喉を通らなくなる。

「お待たせしました、これで最後です」

 最後に塩見くんが運んできたのは、小鍋の中でとろけたチーズと、サイコロ状にカットされたバゲット。