「もしかしてこれ、ホットワイン?」

 こんな豪華なホットワインを飲んだことはないけれど、香りと色でピンときた。
 私の答えに、塩見くんは満足そうな笑みを浮かべて頷く。

「はい。先輩、帰宅したばかりで身体が冷えていると思って。まずはホットワインで温まってほしかったんです」

 だから、カクテルは待ってと言っていたのか。

「ありがとう……」
「ほかの料理もできているので、すぐ持ってきますね」

 カップに口をつけると、複雑なスパイスの香りが鼻先を通り抜けて、熱い液体が胃に落ちた。いろんなスパイスが入っているせいか、身体が内側からぽかぽか温まってくる。甘みが加えてあるので、普通の赤ワインよりずっと飲みやすい。

 私がホットワインをふーふー冷ましながら飲んでいる間に、テーブルの上がどんどん華やかになっていく。

 トマトとモッツァレラチーズ、バジルをミルフィーユのように重ねたカプレーゼ、鶏の手羽元のオーブン焼きらしきもの、そして、チョコレートクリームでデコレーションされたブッシュ・ド・ノエル。