「なつかしい、これ……」

 ふと、これを塩見くんにプレゼントしたい欲求にかられる。子どもっぽいし、中に入っているのはお菓子だし、喜んでもらえるかは微妙だ。でも急に、サプライズでクリスマスプレゼントをあげたくなったのだ。今日振られるかもしれないから、あとを残さないもので、なにか。

 もうこれにしちゃえ、と思い切ってサンタ長靴をカゴに入れる。重くないし、食べたら消えるし、ちょうどいい。振られたあとだって、冗談を装って渡せる。塩見くんは、こんな愛らしいものをゴミ箱に捨てるような人ではないと思うし。

 さっきから、振られたときのことばかり考えている自分に気づいて愕然とした。

 ダメだ、当たって砕けたあとにどうやって受け身を取るかばかり考えていては。傷が最小限ですむ方法を考えていたら、素直な気持ちなんて伝わらない。
まずは、勇気を出してみること。全力でぶつかってみること。大丈夫。結果がどうあれ、心に負った傷を自分で直せるくらいの力は、二十八年の人生で身につけてきたのだから。

 秘密のお菓子をしのばせたスーパーの袋を持って、帰路を急ぐ。電車の中でメールをすると、もうすでにディナーの準備はできているようだった。
家に荷物を置いて、軽く化粧直しをしたあと、塩見くんの部屋のチャイムを押す。