「そういう久保田こそ、メイクも服も気合い入ってるじゃない。デート?」

 コートをハンガーにかけながら尋ねると、久保田は眉をハの字にして目をうるませ、今にも泣き出しそうな顔になった。

「それが……。いつもつるんでいる男女六人の合コンメンバー、だれも恋人ができなくて。クリスマスも全員で集まることに……」
「それはもう、その中で恋人を作れってことなんじゃないの? 最初はそのつもりで合コンしたんでしょ?」

 ロッカーの扉を閉めながらそう伝えると、隣で同じ動作をしていた久保田がぴたっと動きを止めた。

「く、久保田? 大丈夫?」

 うつむいて表情の見えない彼女に、手を伸ばす。触れる寸前にガバッと顔を上げた久保田は、「その手があったんですね……!」と目をいっぱいに見開きながら声を震わせていた。

「ありがとうございます、先輩! 今日は私、いつもと違う女らしさをアピールして勝利を勝ち取りたいと思います!」

 祈るような格好で、がっちり私の両手を握りながら顔を近づけてくる。いつもより念入りに塗られたマスカラに縁どられた瞳は、キラッキラに輝いていた。

「……な、なんの勝負? ま、まあ、がんばって」