年末の時期はどの業界も師が走る。連日の残業で金曜日の約束は自然と流れ、ふたりで会うことはないまま、クリスマスイブ当日を迎えた。

「あっ、先輩、今日はクリスマスコフレでのメイクなんですね~! やっぱりフルで使うと、かわいいなあ」

 出勤すると、ロッカーで久保田と鉢合わせた。

「う、うん。やっぱりクリスマス当日に使わないと、と思って」

 アイメイクのセットと、私の企画したミニリップとグロスのセット。少しでも自信を持ちたくて、お守り代わりに使ったのだ。クリスマスコフレだけあって、パールとラメが多めの華やか仕様だが、セットだけあってフルで使ってもくどくならない。

「帰り、どこかに寄るんですか? 今日なんだか、服もかわいいし」
「ううん。まっすぐ家に帰る。服はほら、メイクに合わせただけだから」

 嘘は言ってない。家に帰ってから、隣の家に行くだけだ。

 褒めてもらった服は、雑誌の『クリスマスデート特集』に載っていたキャメル色のニットワンピースで、先日デパートまで買いに走ったものだ。シンプルだけど身体のラインがキレイに見えるデザインが気に入っている。

 どこかにクリスマスカラーがほしいなと思って、大ぶりのコットンパールのイヤリングと、ガーネットのプチネックレスを選んでみた。ワンピースのデコルテが開いているので、控えめに光る石は相性がいいはず。