「ううん、仕事のあとは、なにも」
「金曜日じゃないんですけど、一緒に飲みませんか。僕の家で」
「え、いいの? 塩見くんのほうこそ、予定は……」
「僕も仕事だけです。でも、せっかくだから夕飯はクリスマスっぽいものを作ろうと思っているので、付き合っていただけたら助かります」

 後輩の子と過ごすのではないということは、まだお付き合いはしていないと期待していいのだろうか。

「じゃあ、お言葉に甘えて……」
「はい。クリスマス仕様のおつまみ、楽しみにしていてください」

 私は、決めた。クリスマスイブ、塩見くんに、告白の返事をどうしたのか、ちゃんと訊く。そして、その答えがどうであれ、自分の気持ちは伝える。

 もしかしたらこれから後輩と付き合うつもりかもしれないし、そうじゃなくても振られるかもしれない。そっちの可能性のほうが、ずっと大きい。でも、私がこんなに塩見くんに助けられてきたこと、ちゃんと伝えたいと思った。

 大事な金曜日の時間がなくなったとしても、ここから新しい関係を築いていけるかどうかは、私たち次第だ。そのときは――また『親しい飲み友達』くらいには戻れるように、がんばってみよう。