「はー、お酒もおつまみもおいしかった! 満足満足!」

 白い息を吐きながら、駅までの道のりを塩見くんとふたりで歩く。
 あんな出来事があったことを払拭するくらい、あのあと私はひときわ明るく振る舞い、飲んで食べた。

 塩見くんは最初心配そうな顔をしていたが、私が無理をしているのではないとわかると、安心したように私のテンションに合わせてくれた。

「今日はずっと、楽しい夜だったなあ……」
「僕も楽しかったです。思いがけず先輩に会えてよかった」
「うん、私も会えてよかった」

 今度の『私も』は口からするっと出てきた。素直になるのって、実はそんなに難しいことじゃないのかもしれない。
 だんだんと回数を重ねていけば、ドキドキしなくても、気合いを入れなくても、自然と素直な思いを口にできるようになるのかも。

「先輩、クリスマスイブなんですけど、なにか予定ありますか?」

 電車を下りてアパートに向かっている途中、塩見くんが歩みをゆるめて尋ねてきた。