「家庭も人も、外から見ただけじゃわからないのね、やっぱり」
「だからおもしろいんじゃないですか。先輩だってそうでしょう? 外から見てるだけじゃわからないことだらけの人なんですから」
「それは、私がおもしろいって言いたいの?」
「うーん、どうでしょう」

 懐かしい軽口を叩いていると、雰囲気のいいお盆に載ったお通しと、江戸切子に注がれた日本酒が運ばれてきた。

 ビールやレモンサワーも捨てがたいが、ここはお店の雰囲気に合わせて日本酒チョイスだ。
 塩見くんのウーロン茶と軽くグラスを合わせて乾杯する。

「お通しもおいしいし、食器にもこだわってるし、いいお店ね、ここ」
「迷っていた先輩が急に、絶対ここ!って決めましたもんね。さすがです」
「長年飲み歩いてきた嗅覚が備わっているから、いいお店はだいたい雰囲気でわかるのよ」

 日本酒もフルーティーで、クセがなくて飲みやすかった。ふたりで思いつくまま注文したカウンターの上には、どんどんおつまみが載せられていく。

 マグロの稀少部位のお刺身、カツオのたたき、若鶏のおろしポン酢、ほやの塩辛。