まるで思いが通じたような、塩見くんからのお誘い。うれしいけれど、『うん』と頷いてついていくだけでいいのか、悩む自分がいる。

 今までずっと、自分から動かなくても、塩見くんが引っ張って、居心地のいい場所に連れていってくれた。でも今日は、私も少しだけ、素直になってみよう。

「……実は私も、塩見くんを誘おうと思ってたの。その、もう少し話がしたくて」

 ドキドキしながら伝えると、塩見くんは一瞬だけ目を見開いて「そうなんですか、同じですね」と微笑んでくれた。

「お店、どうしましょうか」
「そうね……。お酒とおつまみがおいしくて、気取らない店があればいいんだけど」

 女子っぽく、イタリアンやビストロでも挙げておけばよかったのかもしれないが、ぱっと口から出たのは実に私らしい答えだった。塩見くんは「先輩はそう言うと思ってました」と楽しそうにしているから、まあいいか。

「それじゃ、新橋の駅前ビルはどうですか? 入る店はむこうで決めればいいし」
「いいわね。私も何度か行ったことあるの。小さいお店がいっぱいあって楽しいわよね」

 確かにあそこなら気取った店はないし、どこに入ってもだいたいおいしい。