それから私たちは、美容部員さんに挨拶して、百貨店をあとにした。

「先輩、あそこの店長さんとすごく仲がいいんですね。しょっちゅう会っているような口ぶりでしたし」

 とっぷり日が暮れて、クリスマス用の装飾がまぶしい銀座の道を、塩見くんと歩く。会社を出たときより気温は下がったはずなのに、私の身体は興奮でぽかぽかしていた。

「うん。新色が発売するたびにリサーチに来てたら、いつの間にか常連みたいになっちゃって。それ以外にも、銀座に出ることがあったら立ち寄って差し入れしたりしてたから」
「……本当に、仕事熱心ですね」

 そう褒める塩見くんのことも、店長さんはよく知っていた。入社二年目で顔と名前を覚えられているということは、それだけ頻繁に実店舗に足を運んでいる証だ。

「今日は本当によかった。自分の企画したコフレでお客さまが笑顔になって、売れていく瞬間が見られたんだもの」

 はーっと大きく息を吐くと、塩見くんがちらりと私を見て、また前を向いた。