社員旅行のあとから、モヤモヤした気持ちを吹き飛ばすように仕事に打ち込んできた。何度か迎えた金曜日では、態度がぎこちなくなって、以前みたいに素の姿でくつろげなくなった。部屋着とすっぴんをやめて、飲む量も控えめになった私に塩見くんはなにも言わない。声に緊張が混じっているのにも、気づいているのかわからない。

 なんでも塩見くんが先回りして気遣ってくれると思っていたけれど、それは甘えだった。

 こうなってみてやっと、いろんなことが塩見くん主導で回っていたんだなと気づく。塩見くんがさりげなく引っ張ってくれていたから、私はそれに乗っかるだけでよかったんだ。お膳立てしてくれた居心地のいい空間の中で弱音を吐いて、心地いい言葉をもらって満足していた。

 自分からアクションを起こさないといけない状況になったら、なんにも進まなくなるなんて。

 いまだに告白の返事のことも訊けていないし、私が塩見くんを好きなことだって、まったく伝えられていない。

 恋愛上手な女子だったら、自然なスキンシップや会話の駆け引きでさりげなく匂わせたりできるんだろうけれど、私には無理だ。意識すればするほど、笑顔も会話も硬くなってしまう。