「先輩、今日は一段と仕事に熱が入ってますね」

 パソコンと真剣な顔でにらめっこしていたら、隣の席から久保田の声が飛んできた。

「コフレの発売日だからね。今日の仕事終わらせたら、早めに帰らせてほしいって部長にお願いしてるの。百貨店に市場調査に行きたくて」

 私は、画面から目を逸らさずに答える。
 いくら私たちがコフレを企画して発売させても、実際に売っているのはコスメカウンターだ。会社の箱の中にいては、お客さまの生の反応がわからない。

「発売日当日の現場、チェックしたいですよねー。どこの百貨店ですか?」
「銀座に行く予定。顔なじみの美容部員さんもいるし」
「いいなあ。私も帰りに寄ってみようかな。お店、閉まっちゃうかもしれないけど。そのときは明日、報告してくださいね!」

 自分が企画したコフレがどんなふうに売れているのか知りたい。ちゃんとお客さまに喜んでもらえているのかも。いいものを作れた自信があると言っても、やはり不安なのだ。

「もちろん。しっかりチェックしてくるわ」
「よろしくですー」