「先輩は、思った通りの反応を返してくれるから作りがいがあります」

 メインのおつまみも、すぐ出てきた。
 まぐろのお刺身とわさび漬けが和えてあって、塩見くんのほうはごはんに載せて丼にしてある。

「まぐろとわさび漬け、合いそうね。丼にしたやつもおいしそう」
「そもそも、まぐろ自体をわさび漬けにする料理もありますからね。合わないわけがないと思って」

 塩見くんも、エプロンを脱いで対面に座る。パリパリ焼きも、わさび漬け和えも、おいしいはずなのにやっぱり味がわからない。

 食欲がないと、『おいしくなかったのだろうか』と塩見くんが気にすると思って、日本酒でおつまみを流し込む。

「先輩、今日ペース早くないですか?」
「そ、そう? おつまみも地酒もおいしいから、つい」

 心配そうな塩見くんを無視してどんどん地酒の瓶を開けていくと、いい感じで酔いが回ってきた。

「はあ~」

 グラスを空にしてテーブルに置くと、「先輩、やっぱりおかしいです。なにかあったんですか?」と塩見くんが詰め寄る。少し、怖い顔をしていた。

「……あったのは、私じゃなくて、塩見くんでしょ」

 するっと、そんなセリフが口から出ていた。