「これ……。わさび漬けと、しらすと、桜エビ……?」
「塩見くんが好きそうだと思って、買っておいたの。自分用の地酒も買ったけど」

 そう告げると、塩見くんは「まいったな……」と頭をかいた。

「え。苦手なもの入ってた?」

 私があわてると、塩見くんはかぶせるように否定した。

「違うんです。ちょっと待ってくださいね」

 キッチンに向かう塩見くん。冷蔵庫を開ける音がして、戻ってきた彼の手には日本酒が数本、握られていた。

「僕も地酒、先輩が好きだと思って買っておいたんですよ。お土産です、って渡してびっくりさせようと思ったのに、先に同じことされたからまいっちゃいました。しかも地酒、かぶっちゃったし」

 テーブルに置いたそれは、私が自分用のお土産に買ったのとまったく同じラインナップ。こんな偶然にさえ、感激で胸が震えてしまう。

 私が塩見くんのことを考えてお土産を選んでいたあの時、同じ場所で、塩見くんも私のことを考えてくれていたんだってこと。それがなによりも、うれしかった。

「……ううん、うれしい。ありがとう」

 そう告げると、塩見くんはホッとした表情を浮かべた。