告白の現場を盗み聞きしたり、塩見くんへの気持ちに気づいたり、記憶がなくなるまで酔い潰れたり。いろいろあった社員旅行だったけれど、帰ったらまた仕事をがんばろう。そして次の金曜日には、塩見くんに告白の返事をどうするのか、思い切って聞いてみよう。

 自分の行動を決めるのは、それからでも遅くないはず。こわい決断を先延ばしにしているだけにも、思えなくもないけれど……。

 それでも、そう決めたあとは少し安心して、帰りのバスの中では眠りにつくことができた。

 * * *


 そして、次の金曜日。私は塩見くんの部屋のドアの前で固まっていた。片手にお土産の入ったビニール袋を提げて、空いた手でチャイムを押す格好のまま、指が動かない。

 この五日間、モヤモヤした気持ちを抱えながらも仕事に没頭してきた。何回も、塩見くんへの質問のセリフもシュミレーションしてきた。でも、いざその時が来ると、怯えて身体がすくんでしまう。

 私って、こんなに弱かったっけ。
 塩見くんを好きになってから、知らない自分がどんどん引きずり出されているみたいで、怖くなる。

 ぼうっとしていると、目の前のドアが内側から開き、塩見くんが顔を出した。