明け方目を覚ますと、部屋は雑魚寝状態だった。女子社員にはかろうじて毛布がかけられているけれど、男性社員はそのままで、浴衣がはだけてタンクトップとトランクスが丸見えになっている人もいた。

「酒臭っ。頭痛っ」

 自分のものか他人のものかわからないけれど、アルコール臭がすごい。頭もガンガンしているけれど、私はそんなに飲んだのだろうか。そういえば途中からの記憶がない。

 部屋の持ち主である塩見くんと海老沢くんの姿が見えないが、戻ってくるまで待つべきだろうか。

「う~ん、先輩、起きたんですかあ?」

 隣で寝ていた久保田が目を覚ます。

「う、うん……。ねえ、私昨日、なにもやらかしてないわよね? 途中からなにも覚えていないんだけど」

 あくびをしながら伸びをする久保田に尋ねると、目を泳がせながら口ごもる。

「あ、あ~……。実は私も酔っちゃってあんまり覚えてなくて。でも大丈夫だと思いますよ、たぶん」

 本当だろうか。でも、信じたほうが幸せなままでいられる気がする。本能的に。

「ねえ、お酒臭いから朝風呂に行きたいんだけど、勝手に帰って大丈夫かしら」
「あ、大丈夫ですよ。海老沢くんたちもいないから、きっとお風呂かゲームコーナーじゃないかな。メッセージ入れとくんでお風呂行きましょ。私も入りたいです」

 朝風呂に入って、身支度して、昨日と同じ宴会場で朝食を摂って。飲み潰れたとは思えないような爽やかな旅館の朝を満喫する。