「えー、大丈夫ですよ。それに私、まだイベント感足りなくて。このまま旅行が終わっちゃうの惜しいんで、一緒に来てくださいよー。さすがにひとりじゃ行きにくいし」

 久保田が私の腕をつかんで揺する。

「ええー……」

 結局、久保田の熱意に負けてついていくことになる。

 展望台のときもだけど、私、久保田を自分の行動の言い訳にしちゃってる。いざというときに自分が傷つかないように、『無理やり連れていかれたから』っていう免罪符を持っていないと不安なんだ。

 臆病で、面倒くさくて、最低だな、私。こんなんで、憧れている先輩なんて言ってもらうのが申し訳ない。

「お邪魔しまーす」

 開けっ放しになった玄関扉のむこうにある襖を開けると、私たちの部屋の二倍くらいの広さの和室に、思ったよりもたくさんの人がごった返していた。

「うわあ、ぎゅうぎゅうですねえ」
「企画部の女子も、何人かいるわね」
「あ、先輩、あそこ。例のあの子もいますよ」

 手のひらで口元を隠すようにして、久保田が耳打ちする。

 女子グループで固まっている一角に、塩見くんに告白していた女の子がいた。