「先輩、どうぞ。気分は悪くなっていないですか?」

 ペットボトルのスポーツドリンクを受け取る。

「大丈夫。買ってきてくれてありがとう」
「ゆっくり休んでくださいね。先輩が飲み終わるまで、僕もここで時間をつぶしますから」

 そう言って、私の対面のソファに腰を下ろす。
 塩見くんの照れたような笑顔を見ていると、またまぶたが熱くなるのを感じた。

「……ありがとう」

 うっかり涙がこぼれてしまわないように、上を向いておでこにペットボトルを当てた。

 訊けない。あの子の告白の返事、どうするつもりなのって。

 尋ねたところで、自分にはあの子みたいに告白する勇気もない。塩見くんより四つも年上だし、女子力なんて皆無だし、かわいげなんてないし。勝てるところがひとつも思いつかない。

 ぴりり、と塩見くんのスマホが鳴ったけれど、確認することもせずに私の様子をうかがっている。
 だけど、そんな塩見くんの優しさが、今はとても苦しい。