「ふふふ、胸だけは意外とあるんですよ、私。昔はコンプレックスだったんですけど、今はもう武器として使おうと思ってます」
「久保田から、コンプレックスなんて言葉が出るとは……」
「ちょっと、なんですかそれ。私だっていろいろあるんですよ。先輩みたいに完璧じゃないんですから」
「……私だって、完璧なんかじゃないわよ」
自分の武器を知り尽くしている久保田がうらやましい。ふわふわしていて、女の子らしかった、塩見くんに告白していたあの子も。
本当は私だって、もっと女の子らしくなりたい。自分に自信を持ちたい。
でもそれって、なんのため? ううん、だれのため?
ずっと自分の心を占拠していた彼の笑顔がふいに浮かんで、まぶたが震える。
「え、なにか言いました?」
「ううん、なにも」
お湯を顏にかけるふりをして、流れてきた涙を隠した。
気づいてしまった。今まで隠していた、塩見くんへの気持ちに。
だから、新卒の後輩に『四つ上なんてありえない』と言われたときも、結婚式で女子力のなさを指摘された気持ちになったときも、あんなにショックだったんだ。そのたびに、塩見くんの言葉に救われていた理由も、今わかった。
気づきたくなかった。気づいてしまったら、今まで通りではいられなくなるから。
お湯に浸かったまま動けなくて、のぼせる寸前まで入っていたら、顔が真っ赤になって久保田に心配された。
「久保田から、コンプレックスなんて言葉が出るとは……」
「ちょっと、なんですかそれ。私だっていろいろあるんですよ。先輩みたいに完璧じゃないんですから」
「……私だって、完璧なんかじゃないわよ」
自分の武器を知り尽くしている久保田がうらやましい。ふわふわしていて、女の子らしかった、塩見くんに告白していたあの子も。
本当は私だって、もっと女の子らしくなりたい。自分に自信を持ちたい。
でもそれって、なんのため? ううん、だれのため?
ずっと自分の心を占拠していた彼の笑顔がふいに浮かんで、まぶたが震える。
「え、なにか言いました?」
「ううん、なにも」
お湯を顏にかけるふりをして、流れてきた涙を隠した。
気づいてしまった。今まで隠していた、塩見くんへの気持ちに。
だから、新卒の後輩に『四つ上なんてありえない』と言われたときも、結婚式で女子力のなさを指摘された気持ちになったときも、あんなにショックだったんだ。そのたびに、塩見くんの言葉に救われていた理由も、今わかった。
気づきたくなかった。気づいてしまったら、今まで通りではいられなくなるから。
お湯に浸かったまま動けなくて、のぼせる寸前まで入っていたら、顔が真っ赤になって久保田に心配された。