「う~ん、そうなんですかね? 確かに同期でも、優しいって話しか聞かないしなあ。海老沢くん、おちゃらけたことばっかり言ってるから、いじっただけかもしれないですね」
「きっと、そうよ。……たぶん」

 たまに見せる黒い表情だとか、年上をからかうような言動を思い出したが、私の考えすぎだろう。すでに塩見くんの手のひらで転がされているのでは、という考えも頭をよぎるが、それは恋人の場合であって私には当てはまらないだろうし。


 午後は、熱海の観光だ。ロープウェイに乗って展望台に上ると、海と、山の麓にある温泉街が一望できる。

「いい眺めね。ふだん山も海も見ていないから癒されるわ。一度に満喫できてお得な気分」
「先輩、むこうに恋愛おみくじがありましたよ。一緒に引きませんか?」
「い、いいわよ、私は」

 近くに恋愛成就の絵馬もかかっているし、なにげにカップルスポットだったようだ。

「ええー、じゃあアイス食べましょう、アイス」
「まあ、それくらいなら……」

 おねだりを断りきれず、展望デッキで風に吹かれながら久保田とアイスを食べることになった。