「あの……、とりあえず注文するものを決めない?」

 店員さんがあたたかいお茶を持ってくるのが見えたので、メニューをふたりに渡す。

「あ、そうですね。すみません」

 四人とも定番の海鮮丼を頼んで、その後はなごやかな昼食となった。久保田と海老沢くんが同期の噂話をして、私と塩見くんは相槌を打つ係。海老沢くんは、塩見くんをからかうのには飽きたのか、その後腹黒の話題が出ることはなかった。

「先輩、先輩! 塩見くん、あの見た目で腹黒なんて萌えません? 実はドSなんですかね?」

 昼休憩を終えてバスに乗り込むやいなや、久保田が興奮した様子で耳打ちしてきた。

「海老沢くんが冗談で言っているだけかもしれないじゃない。あんまり真に受けないほうがいいわよ」

 ちゃぽちゃぽするお腹をさすりながら答える。

 マグロや海老、ウニなどが丼からはみ出そうなくらい盛られた海鮮丼はとろけそうなおいしさだったが、この四人で昼食を食べている、という緊張感で喉につまり、お茶をがばがば飲んで流し込むように食べるはめになった。